三洋電機<6764>
2007/12/25
「過年度決算調査委員会調査報告書について」サブテーマは別エントリーで建てましたので、
メインテーマを考えてみたいと思います。
「三洋減損ルールは公正妥当な会計慣行になりえないのか?」
調査報告書の結論としては、
>> P7
三洋減損ルールは、金融商品会計基準・実務指針に準拠したものではなく、これにしたがって行われた平成13年3月期から平成16年3月期にかけての関係会社株式減損は、不適切な会計処理であったといわざるを得ない。
>>
と、三洋減損ルールを否定するものであります。
・金融商品会計基準は公正な会計慣行であった
↓
・三洋減損ルールは金融商品会計基準・実務指針に準拠していなかった
↓
・三洋減損ルールは不適切な会計処理であった
調査報告書中に「公正な会計慣行」という文言は2回しか登場しておりません。
よって「三洋減損ルールが公正な会計慣行でなかった」
という結論は導出されておりません。
金融商品会計基準等に準拠していないことをもって、
「不適切な会計処理」と結論付けているだけであります。
自分としましても、
・金融商品会計基準が公正な会計慣行であること
・三洋減損ルールが基準に準拠していないこと
については異論はありません。
P4の実務指針策定関与者の方のご意見や、
P22からの会計的評価の箇所を読まれれば、
この事実についてはすんなりと理解できるところです。
では「三洋減損ルールは公正な会計慣行ではなかった」
のかと問われた場合、「Yes」と即答できない自分がおります。
「金融商品会計基準が公正な会計慣行であった」ことと、
「三洋減損ルールは公正な会計慣行ではなかった」ことは、
直接的に関係するものではないだろうと。
以下は思いっきり私見でございますが、
「会計処理を一義的に決められるほど会計事象は単純ではないことがある」
そのため「ある会計事象に対する公正な会計慣行は複数存在しうる」
よって「会計士による監査が必要とされる」
と稚拙ながらに考えております。
公正な会計慣行が明確に決まるようであれば、
機械的に「OK」「NO」の判断をすればいいわけで、
そもそも会計士の存在理由がない。
(監査小六法マシーンがあれば会計士は不要な世界)
「中央青山監査法人が適正意見を付していることをもって
三洋減損ルールは公正な会計慣行になりえないのか?」
冒頭の疑問提起に一文追加してみましたが、
現在の自分の問題意識はコレに尽きます。
非上場企業における会計処理であるならイザ知らず、
仮にも日本を代表する企業の会計処理であります。
そこに会計のプロフェッションが責任を取る意思をもって、
適正意見を付していることの意義を考えた場合に、
「金融商品会計基準」に準拠していないことをもって、
「公正な会計慣行ではない」と言い切れるものかどうか。
会計基準はあくまで「ワンオブゼム」だと考えているのですが、
そういうことを言うと叩かれるんですよね、これがまた。(タハハ)
国際会計基準も米国会計基準もあるわけですから、
日本の会計基準自体が相対的なものに過ぎないんですけど。。。
の内容にも関係しますけれども、(応援しているので何度でも掲載)
「不適切な会計処理」の認定が、
会計士の監査意見とは関係なく決まるケースが多いことを、
「非常に危惧しております」(担当会計士による修正の場合は別)
逆説的には「我々の存在意義は?」
という突き付けに他ならないわけですが。
さて、三洋電機の事案に関する個人的なまとめを致しますと、
・「過年度修正を行った以上」現経営陣は旧経営陣に違法配当の責任を問うべきである
・旧経営陣は当時の会計処理が公正な会計慣行であったことを争うべきである
というところになりますでしょうか。
過年度修正で過去を否定し配当可能利益がないと主張している以上、
現経営陣は責任追及しなければ自己矛盾を抱えてしまっている、
そう思うのですが如何でしょう。(コンプラ上もどうなんですかね?)
そして、旧経営陣は当時の会計処理が正しかったことを争って欲しい。
判例が欲しいからというのもありますけれど、
勝算がないわけではないと思っているのですが如何でしょうか。
(減損検討対象の重要性判断のところなどは厳しいかな・・・)
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